ドストエフスキーの小説「罪と罰」を読んだ気になれる。

・七月はじめの酷暑のころのある日の夕暮れちかく。

 

・主人公ラスコーリニコフは、金貸しの老婆アリョーナイワーノヴナの所へあれの下見に出かける。

 

・主人公は貧乏だったが、この頃は貧乏さえも苦にならなくなった。仕事もやめてしまったし、する気もなかった。

 

 

 

・老婆に質草(父親の形見の銀時計)を預けて、利息を引いた額1ルーブリ15コペイカを受け取る。

 

・あれの時のために、老婆の部屋の中の配置などよく観察した。部屋が綺麗に片付いているのは妹リザヴェータの仕事だなと思った。

 

 

 

 

・「2、3日うちにまた来るかもしれません」と言って老婆の部屋を出た。ラスコーリニコフはすっかりうろたえていた。

 

 

 

・老婆の家へ出かけて行くときから、心の乱れが彼を圧迫し、苦しめはじめていた。

 

 

 

・思いがけぬこの弱りようは空腹のせいだと思い居酒屋へ入る。

 

 

 

・立ち寄った居酒屋でマルメラードフが主人公ラスコーリニコフに声をかけてきた。

「失礼ですが、ひとつ話相手になってくださらんか?」

 

 

・ラスコーリニコフの向かいに座り話し始めた。

 

「貧は罪ならず。これは真理ですよ。飲んだくれることが善行じゃないことくらい、わたしだって知ってますよ」

「しかし、貧乏もどん底になると、いいですか、このどん底というやつは―――罪悪ですよ」

「貧乏程度のうちならまだ持って生まれた美しい感情を保っていられますが、どん底に落ちると、もう誰だってダメです」

 

・マルメラードフはこのどん底で、自分をはずかしめるために酒を飲んでいるという。

 

 

・「ところで学生さん、頼んだことがありますか?絶望的な借金を」とラスコーリニコフに問う。

 

「相手が貸さないのは分かりきっている。だって貸すわけがありません。わたしは踏み倒すんだから」

「無理だと知りつつ―――出掛けて行くんです。他に行くところがないから。どんな人間だってどこかに行くところがなきゃ、やりきれませんよ

 

 

① 今の妻(カテリーナ・イワーノヴナ)とはお互いに再婚同士だった。

 

・妻は、佐官の家に生まれ貴族学校で教育を受け教養もあり名門の出であり、えらく気位が高い。

 

・カテリーナは前夫と死別して3人の子どもをかかえて、救いのない貧しさの中に居たとき、マルメラードフの後妻に来た。

 

 

「わたしの申し出に、泣いて、手をもみしだきながら―――来たんですよ!どこへも行くところがなかったからです。わかりますかね、学生さん、もうどこへも行き場がないということがどんなことか?

 

 

② マルメラードフはここ5日間家に帰っていないと言い、その経緯を説明した。

 

・マルメラードフはつい5週間前にイワン・アファナーシエヴィチ閣下より官職に採用された。「月給が貰えるぞ!」と家族で喜ぶ。

 

・マルメラードフが官職に復帰したことで、妻カテリーナの言動が変わる。立ち振る舞い、言葉遣いが上品になる。またおかみのアマリヤ・ヒョードロヴナをお茶に誘って自慢話をする。

「きみがいなくなってから成績がよくないんだよ。こうおっしゃったんですって」など、かなり盛って話していた。

 

 

・6日前に初めての俸給23ルーブリ40コペイカを妻に渡す。

《あなたはなんて可愛いらしいペットでしょう!》なんて言うんですよ。《まるで、わたしに可愛らしいところがあるみたいじゃありませんか、こんなわたしに!》

 

 

・しかしその次の日。今から5日前、俸給の残りを全部かっさらって家を出てもう5日になる。仕事もおじゃん。飲み歩いていて持ち金はもうない。

 

・妻には連絡もしていないので、今頃妻カテリーナは血まなこで探しているはず。

 

 

③マルメラードフには、前妻との連れ子の娘ソーニャがいる。

 

・一家はどん底の貧乏。住まいはアマリヤ・フョードロヴナ・リッペヴェフゼルという婦人の家に間借りをしている。(レベジャートニコフも同じく間借りしている)

 

・ソーニャは黄色い鑑札(売春婦の鑑札)で暮らし、仕送りをして一家を支えている。カペルナウモフの部屋を借りて一人暮らし。

(ソーニャは家主のおかみを通じてダーリヤ・フランツォヴナから売春を勧められていた。継母カテリーナからは「そんなに惜しいものかい?宝ものでもあるまいし!」と言われた)

 

 

④マルメラードフは今日、ソーニャの家に酒代をねだりに行った。ソーニャは、なけなしの30コペイカをくれた。何も言わずに、泣きながら。

 

 

・――――主人公はマルメラードフの家庭の事情を知る。

 

 

 

 

 

 

・ラスコーリニコフは酔っ払ったマルメラードフを自宅に送り届ける。

 

 

 

 

・家に着いたマルメラードフは妻カテリーナ・イワーノヴナにひっぱたかれる。

「もどってきやがった!ごろつき!お金はどこ?どこなの?」

 

 

 

・妻カテリーナはラスコーリニコフに詰めより、「あんたまで一緒になって!出て行きなさい!」と追い出す。

 

 

 

・ラスコーリニコフは出がけにポケットにあった銅貨を手に触れただけつかみ出し、そっと小窓の台へ乗せた。

 

・主人公は銅貨を置いてきたことに《ばかなことをしたものだ、彼らにはソーニャというものがいるじゃないか》と考えた。

 

《ところで、ソーネチカは今日にも破滅しかねない。そしたらあの一家は明日のあてがはずれて、どうにもならんことになる。たいしたもんだよ、ソーニャ!それにしても、マルメラードフもカテリーナも、よくまあこんな井戸を掘れたものだ!そしてくみ上げている!くみ上げて、飲んでいる!あたりまえのような顔をして。はじめちょっとは泣いたが、もう慣れてしまっている。人間なんてあさましいものだ、どんな事にでも慣れてしまうのだ!》

 

 

・「だが、おれの言ったことがうそだとしたら」と彼は思わず大きな声を出した。「実際は人間がおしなべて、つまり人類全部が、卑劣でないとしたら、あのことはすべて―――ー偏見ということだ、見せかけの恐怖にすぎぬ、とすれば何の障害もあり得ない、当然そういうことになるわけだ!・・・・」

 

 

 

 

・ラスコーリニコフは朝遅く起きると、女中のナスターシヤから「お母さんから手紙が届いているよ」と手紙を渡される。

 

・手紙の書き出しは《わたしのかわいいロージャ》

(※母はロージャと呼ぶ)

 

・母(プリへーリヤ・ラスコーリニコワ)は主人公ロージャが、大学もやめて、家庭教師のバイトもなく収入がないことに心配している。

 

 

 

・そして妹の今日までに起こった出来事が書かれていた。

 

 

・去年、ドゥーニャは仕事でスヴィドリガイロフの家に家庭教師として入った。

 

・スヴィドリガイロフは、はじめのうちはドゥーニャに辛くあたり、からかったりした。

 

・しかし、実はスヴィドリガイロフはドゥーニャのことが好きになり、それを隠すためにわざと邪険にあたったり、軽蔑していたという。

 

・しまいにはドゥーニャを口説くようになってきたが、ドゥーニャは避け続けていた。

 

・ある日、妻(マルファ・ペトローヴナ)は庭で良人おっとがドゥーニャを口説いているところを盗み聞いてしまった。

 

・妻マルファは、反対にとり、ドゥーニャからもちかけたものだと考えて、ドゥーニャを悪者にして仕事をクビにして家から追い出した。

 

・ドゥーニャの間違ったうわさは町中に流れて、悪口や嫌がらせをうけて教会にも行けなくなり、家主には立ち退きをせまられる始末。

 

・しかし、スヴィドリガイロフがドゥーニャには全く非がないこと、口説いていたのは自分だったと妻マルファに告げた。

 

・妻マルファはドゥーニャに対してしたことを後悔して、ドゥーニャに許しを乞いました。

 

・この真実が町中の人にも伝わると、皆、急に掌をかえしたようにドゥーニャを尊敬の目で見るようになった。

 

・このことが運命を良い方向へ変えていった。

 

・それを知ったピョートル・ペトローヴィチ・ルージンはマルファを通してドゥーニャと出会い結婚の申し込みをした。

 

・ルージンは嫁にもらうなら人間が誠実で、しかもお金をもっていない娘、それも絶対に苦しい苦境を耐えてきた娘に決めていた。という事を以前から言っていた。なぜなら妻に対してすこしの借りもあってはいけないし、妻に恩人と思わせたほうがいいから。

 

 

 

・ルージンは実務家で勤めは2つ持っていて、もうかなりの財産を蓄えている。なので貧乏から脱出できるし、できればロージャの学費も出して貰えるかもしれない。と期待している。

 

 

・母と妹は、ルージンに希望を託して、彼が自発的に皆を良い方向へ導くと信じている。全てルージンの気持ち次第。だが、母は良い方向にいくとしか考えていない。

 

 

ドゥーニャは自分を犠牲にして家族を貧乏から救うために、結婚を決めたんだとロージャは感じる。

 

 

 

・もうじきルージンがペテルブルクへ行くので、母親と妹ドゥーニャも近々行く予定。

 

 

・母は、ワフルーシンから年金を担保にお金を借りられるので、近々30ルーブリほどロージャに送金できるという。

 

 

 

・ラスコーリニコフは母親からの手紙の内容に激怒する。

 

 

 

・外を歩きながら手紙のことを考えて苦しむラスコーリニコフ。

 

 

・母は息子ロージャのために、娘を犠牲にすることに同意したことで、もうひそかに良心の呵責に苦しめられているに違いない。と主人公は思った。

 

 

・ドゥーニャは結婚を承諾する決意をするときにはゴルダゴの丘にのぼる苦しい気持ちだっただろう。

 

 

・マルメラードフの「わかりますかな学生さん、もうどこへも行き場がないという事が」という昨日の言葉を思い出す。

 

 

 

・ラスコーリニコフが歩いていると酔った若い女が道ばたに倒れ込むように居て、それを見ている中年のおやじが居た。

 

 

 

・若い女性を心配したラスコーリニコフは巡査に20コペイカ渡して自宅に送り届けるように保護を頼む。ラスコーリニコフは最初中年のおやじに対して「おいきみ、スヴィドリガイロフ!そんなところにつっ立って何の用があるのだ?」と声を掛けた。

 

 

・保護を頼んだものの、巡査に保護を頼んだ自分の行動に疑問を持ちながら、歩いていて友人のラズミーヒンの家に行こうかと思うが、やはりあれが終わったあとに行こうと決める。

 

 

・途中、疲れて灌木の茂みの草の上で眠ってしまう。そして夢を見る。7歳くらいの子どもの頃に父親とお祭りの日の夕暮れちかくに郊外を散歩していた。痩せ馬が殺される夢だった。ミコールカ

 

 

・やはり老婆の殺害をすることに自分は耐えられないと感じる。

 

 

・K横町の曲がり角の片隅で露天商の夫婦と話しをしているリザヴェータを見かける。リザヴェータは商人夫婦と明日の19時に会う約束をしていた。と、言うことは、明日の19時に老婆アリョーナは一人であることをラスコーリニコフは知る。(リザヴェータは老婆アリョーナイワーノヴナの腹違いの妹)

 

 

・主人公は老婆アリョーナ・イワーノヴナの事を初めて教えて貰った時の事を思い出す。以下は過去の思い出

①ポコレフという知り合いの学生が話しのついでに教えてくれた。そのあとお金に困ったときに一度老婆のところへ質草を持ってお金を借りたことがあった。

 

②老婆からお金を借りて、その帰り道に入ったレストランのすぐ隣のテーブルで金貸し老婆アリョーナについて話をしている2人の会話を耳にする。

 

③高利で金を貸して意地の悪いこと。リザヴェータへの扱いがひどいこと、既に遺言書も書いており、お金はすべて死後の自分だけに使うことなど。

 

④男の一人が例え話で次のように提案していた。「誰の役にもたたない害である金貸し老婆を殺して、そのお金を、貧しく支えのない将来有る若者に使うと何百、何千人の人々が救われる事になる。

 

⑤ラスコーリニコフはたった今老婆の所へ行ってきたばかりで、老婆の噂話しを聞くとは・・この符号が主人公には不思議に思われた。

 

 

・主人公は自室に帰り、あれの準備に取りかかる。

 

・老婆の家へ向かう。

 

 

・無事に建物へたどり着いた。老婆の部屋は4階にある。

 

 

 

・2階には一つ空室があってドアが開けてあって中では二人のペンキ屋が働いていた。それ以外は人気は無い。

 

 

・4階までくると、息が苦しくなり《このまま帰ろうか》という考えがちらと浮かんだ。《動悸がおさまるまでもう少し待ったほうがよくないか・・・》

 

 

・彼は呼び鈴をひっぱった。2度目は少し強く鳴らした。

 

 

・彼はドアに耳をつけてみると、向こうで衣服がドアに触れた音が聞こえた。うたぐり深い老婆も、ドアにぴったり耳をつけているらしい・・・。

 

 

・彼は存在をアピールするために、わざと身体を動かしたり、すこし大きな声で独り言を言った。

 

・老婆がドアを開けた。彼は、質草を持って来たラスコーリニコフだと伝える。

 

 

 

・質草に細工をしていたので老婆は質草を開けるのに戸惑っている。

 

 

 

・その隙に老婆の頭上に斧を振り落とす。

 

 

 

 

・老婆は床へくずれた。アリョーナは死んでいた。

 

 

 

・ラスコーリニコフが金品を物色していると別の部屋で物音がした。

 

 

・なんとリザヴェータが帰宅していた。

 

 

 

・そのためラスコーリニコフはリザヴェータにも斧を振り落として殺してしまう。これが第二の犯行。

 

・リザヴェータが入ってこれたということは鍵も掛金もかけていなかった事に、自分は混乱していると感じる。

 

・今すぐ逃げよう。現場から立ち去ろう。

 

 

・部屋から階段を一歩降りよとしたところで、誰かの足音が聞こえてきた。

 

 

・誰かがここへ来る!やばい。

 

・その足音は階を上がってくる。

 

 

・ここに来るぞ。この四階の老婆のところへ来るに違いないと思った。

 

 

 

・主人公は再び部屋の中に戻り、ドアを閉めると掛金をしずかに穴に差し込んだ。

 

・足音の客はもうドアの向こうに来ていた。二人はドアをはさんで向かい合った。(名前はコッホで太った男)

 

・さらにもう一人誰かが階段をのぼってきた(学生で、名前はペスチャコフ)。

 

・ドアの向こうに男二人、コッホとペスチャコフがいる。

 

 

・ドアの向こうで二人が会話している。

 

・「誰もいないのですか?」「僕は用があってきたのです」「わたしも用があってきたのですよ」

 

・「待って下さい」と不意に一人が言った。

 

・「ごらんなさい、わかりませんか、ひっぱるとドアが動きますよ。」

 

・「ドアは鍵が掛かっているんじゃなく、内から掛金が差し込んであるんですよ。そら、掛金がガチャガチャ鳴っているでしょう?」

 

・てことは、家の中に誰かいるということです。

 

・二人は中にだれかいるが、出て来られない何らかの事情があると察する。

 

・中で倒れているのか。もしくは中で死んでいるのか・・・

 

・「とにかく庭番を呼んできます。あなたはそこで待っていて下さい」と言って、ペスチャコフは階段を降りていく。

 

 

 

・残った男(コッホ)は、再びドアの取っ手をガチャガチャして掛金を再確認する。

 

 

 

・コッホはしばらく待っていたが、たまらず階段をおりて行く。

 

 

・「助かった」と、ラスコーリニコフは誰も居なくなったのを確認して階段をおりはじめた。

 

・その時、2階で仕事をしていたペンキ屋のミコライとミトレイがふざけて大きな声で叫びながらじゃれ合って庭へ走って行く声が聞こえた。

(✳︎ミコライはこのあと重要人物になる)

 

 

 

・主人公が階段をさらにおりていくと、今度は庭番を連れてコッホとペスチャコフが階段をあがってくる声が聞こえる。

 

 

・「あいつらだ!」もうやぶれかぶれになってそのまま階段をおりていく。と、2階のペンキ屋の居ない部屋が開けっぱなしになっている。

 

・主人公ラスコーリニコフは、その部屋へとびこんで、壁のかげに身をひそめた。

 

 

・ラスコーリニコフはうまく隠れることができた。

 

・隠れているとき、盗んだ品物がポケットから落ちてしまう。

 

 

 

・彼らは主人公の隠れている部屋の前をとおり4階にあがって行く。

 

 

・主人公は盗品を落としたことに気づかず、部屋を出ていく。

 

 

・主人公ラスコーリニコフはそれから誰にも会わずに自室へ帰り着くことができた。

 

・途中、凶器の斧も元の場所に戻すことができた。

 

 

・主人公はソファに横になり寝た。

 

 

・次の日、女中ナスターシヤと門番が部屋にきた。

 

 

 

・警察署から呼出状が届いているとラスコーリニコフに渡す。

 

・もうばれたのか?とか思いながらラスコーリニコフは警察署へ向かう。

 

 

•警察署に入ったら、ひざまずいて、いっさいを告白しよう。ラスコーリニコフは心に思った。

 

 

・事務官(ザミョートフ)に呼出状を見せると、「しばらく待って下さい」と言われ、ラスコーリニコフは老婆殺しの件ではないと思った。

(ザミョートフはこれからも絡んでくる人物です)

 

 

 

・ラスコーリニコフは少し元気が出た。

 

 

・呼び出されたのは、以前おかみに借金していた件の事だった。

 

 

・ラスコーリニコフは副署長イリヤと少し口論になる。

 

 

 

・ラスコーリニコフは自分でも思いがけなくむかっとして、しかも腹を立てたことにいくらか満足をえた。

 

 

 

・署長ニコージムフォミッチと副署長イリヤ・ペトローヴィチが昨日の老婆と妹の殺人事件について話をしている。

 

・「コッホとペスチャコフは犯行時刻に現場に居たが犯人のはずがない」などその根拠も添えて。

 

・ラスコーリニコフは老婆殺しの話を耳にしてぶっ倒れそうになる。(気絶した)

 

 

・警察署を出るラスコーリニコフ。

 

・帰りながら、もう捜査が始まると考えて不安になる。

 

 

・部屋に隠していた盗品などをポケットに入れて捨てに行く。

 

 

 

・エカテリーナ運河とネワ河あたりで川へ投げ捨てようと思うが、結局バレないような所の石の下へ隠す。

 

 

 

・財布の中をみないで川へ投げ捨てようとした自分の行動を思い出す。

(老婆へのあの事が、短気が起こした行動ではなく、確固たる目的があったとしたら、なんでいままで俺は何を手に入れたか知ろうともしないのだ)

 

 

 

 

 

・友人のラズミーヒンの家へ行く。

 

 

・ラズミーヒンは主人公の体調が悪いことに気付き心配する。

 

 

 

・ラズミーヒンは翻訳の仕事をしており、その一部の翻訳と3ルーブリを取り分としてラスコーリニコフに渡す。主人公は受け取らずに黙って帰る。

 

 

 

 

・外を歩いていて当たり屋と間違われてムチでなぐられる。

 

 

 

・乞食と思われて20コペイカ恵まれる。

(商家のおかみとその娘らしい若い女性)

 

・主人公は20コペイカを水中に投げる。

 

 

 

・自室に帰りソファで横になるが眠れない。

 

・おかみと副署長イリヤが争っている声が聞こえる。おかみは副署長に殴られている。

 

・この部屋にくるぞと思う。

 

・騒ぎはおさまり副署長イリヤは帰ったっぽい。

 

 

 

・ナスターシヤが部屋にくる。

 

・おかみは殴られていないし、副署長も誰も来ていない。「まぼろしを見たんだよ」と言われる。

 

 

・「水をくれナスターシュシカ」ラスコーリニコフは冷たい水を一口飲んで気を失った。

 

 

 

 

・数日後の朝10時頃、事務員風の男が来る。

 

 

・そこへラズミーヒンも来る。「ひでえ船室だな」と一言。

 

 

 

・事務員風の男は、ラスコーリニコフのお母さんからの35ルーブリを送金依頼されたので来た。

 

・ラスコーリニコフに35ルーブリ渡して帰る。

 

 

・ラズミーヒンは体調の悪いラスコーリニコフにスープを飲ませる。

(ラズミーヒンはスープを2、3度ふうふう吹いたが、そんなことをするまでもなくスープは生ぬるかった)

 

 

・ラズミーヒンは下宿のおかみがラスコーリニコフに貸していたお金をチェバーロフを通して請求してきた経緯について、自分なりの考えを話す。

 

 

・ラズミーヒンは、すでに七等官チェバーロフに支払いをして手形を取り戻したという。

 

 

・ラズミーヒンは送金された35ルーブリのうち10ルーブリで買い物をしてくるといって出掛ける。

(ラズミーヒンは病気になっているラスコーリニコフのお世話をするのが嬉しい感じ)

 

 

 

・ラズミーヒンはこの部屋には何度か来ていたが、ラスコーリニコフは熱にうかされていたので気付かなかっただろうと言う。

・ザミョートフも一緒に来たことがある。

 

 

 

・その時にラスコーリニコフのうわごとを聞いたと言う。ラスコーリニコフは老婆殺しのことをしゃべってないか不安になる。

 

 

・ラズミーヒンが部屋を出たあと、ナスターシヤも部屋を出てラスコーリニコフは一人になる。

 

 

 

・本当は彼らはもうあれをすっかり知っているのか?それともまだ気がついていないのか?ただ知らないふりをしているだけなのか、と苦しい疑問につつまれる。

 

 

・ラスコーリニコフは混乱する。アメリカへ逃亡しようと考える。しかしビールを飲み深い眠りについた。

 

 

 

・ラズミーヒンがラスコーリニコフの帽子や靴、服を買って帰ってきた。

 

 

・そこへ医者のゾシーモフがやっと来た。

 

 

・ラズミーヒンは今日引っ越し祝いをするのでゾシーモフにもラスコーリニコフにも来て欲しいと伝える。

 

・引っ越し祝いには予審判事のポルフィーリィも来るという。

(ポルフィーリィはラズミーヒンの遠い親戚らしい)

 

 

(✳︎ポルフィーリィは予審判事。老婆殺しの事件を担当していて、後にラスコーリニコフを心理的証拠だけで追い詰め、鬼気迫る議論を展開する)

 

 

 

 

・近所で起こった老婆殺し事件の話題をラズミーヒンはゾシーモフに話し始めた。

 

 

・「今は、ペンキ屋が容疑者としてあげられている」

(事件当時2階にいたペンキ屋の2人。ミコライとミトレイの事)

 

 

 

 

・もっとも警察は最初、コッホとペスチャコフを犯人とにらんでいた。

 

・その理由は2人の発言。

 

・「最初ドアの鍵は閉まっていた、ところが庭番を連れて戻ると、ドアは開いていた」

 

・その矛盾だけで、『殺したのはコッホとペスチャコフだ』という警察の論理だった。

 

 

 

・「しかし警察からコッホとペスチャコフが疑われているさなか、突然まったく思いがけぬ事実が出てきたんだ」

 

 

 

・ラスコーリニコフは黙ってラズミーヒンの話しを聞いていた。

 

 

・それは事件後、三日目。

 

 

・事件現場の向かいにある居酒屋の店主(ドゥシキン)が金のイヤリングなどが入った小箱を警察署に提出して、それにまつわる話しをはじめた。

 

 

 

・「おとといミコライがこれを持って来て2ルーブリ貸してくれと言ってきました」

 

 

・「私は、ミコライに、これはどこで手に入れたのか?と聞いたら、道ばたで拾ったと言っておりました」

 

 

・「それ以上は何も聞かずに、ミコライに1ルーブリ渡してこれを預かったのです」

 

 

 

・「翌日、私は老婆アリョーナの事件を知って、ミコライの働いているあの建物の2階の現場へ行きました」

 

・「しかし、ミトレイが一人で働いていて、ミコライは仕事に来ていないということでした」

 

 

・「すると、今朝、またミコライが店に来たので、『昨夜はどこにいた?』、『あの建物であった事件は知っているか?』、『お前があれを持って来た同じ日の晩だ』など質問しました。

 

 

・するとミコライは店から逃げるように出て行きました」

 

 

 

・「それで私はミコライが犯人だと確信したんですんです」

 

 

 

・その日、ミコライは牛小屋で首をつろうとしているところをみつかって警察署へ連れて行かれた。

 

 

・ミコライは警察署で尋問を受けた。

 

・例の小箱は道ばたじゃなく、あの部屋で拾ったと言い、その経緯を話した。

 

 

・「あの晩、夜8時前に仕事の片付けをしていると、ミチカがふざけて俺の顔にペンキを塗ってきて庭へ逃げていきました」

 

✳︎ミチカ=ミトレイ (ミコライはミチカと呼ぶ)

 

・「俺はミチカを追いかけていって庭でつかみ合いをしていた。仲が良いもんだからじゃれ合っていたんです」

 

・「それから一人で建物へ帰ると、入り口のドアのそばにあの小箱が落ちていたんです」

 

 

 

・「小箱は道ばたじゃなく、仕事場のドアのそばで拾ったと言ったんだ」と、ラズミーヒンがゾシーモフに言うと、

 

 

 

・「ドアのかげに?ドアのかげにあったって?ドアのかげにかい?」ラスコーリニコフはだしぬけに叫んだ。

 

 

・ラスコーリニコフの反応にラズミーヒンは、「うとうとして寝ぼけたんだろ」と言って話をつづけた。

 

 

・「ミコライは金のイヤリングを見つけると、すぐにドゥシキンの店に行って1ルーブリ借りて飲みに出かけたってわけさ」

 

 

・《事件の事は三日目に初めて知った》《なぜ首をつろうとした?》《こわかったんです》《無実なら怖くないだろ》《裁判にかけられたらどうしようと》

 

・老婆アリョーナの家にあった金のイヤリングの入った小箱を持っていた事実。そしてその小箱は道ばたで拾ったとウソをついていた事。首つって自殺をはかったこと。

 

・警察はもうミコライを真犯人と断定してしまった。

 

・しかし、ラズミーヒンは、もしペンキ屋が犯人ならば、次のことが納得できないという。

 

 

・あの日ミコライとミトレイが通りで騒いでいたのは、10人ほど証人がいて、《まるで小さい子どもたちみたいに》と証言している。

 

・4階の死体はまだあったかかった。(発見された時まだあったかかった)

 

 

・ついいましがた人を殺して、せいぜい5分か10分しか経っていないのに、

・突然死体をほったらかして、ドアもあけっ放しのままで、

 

・門のすぐまえでキャッキャわめいたり、わあわあ笑ったり、子どもみたいにとっくみあったりという状態が、斧とか、血とか、凶悪なずるさとか、抜かりのなさとか、盗みとか、そういったものと同居しえるだろうか。

 

・そしてラズミーヒンは犯人の行動を以下のように推理して話した。

 

①コッホとペスチャコフがドアをノックした時、犯人は室内に居た。

②ペスチャコフのあとにコッホも下へ降りて行ったので、犯人はその隙に部屋から出た。

③途中、ペンキ屋の居なくなった2階の部屋へ犯人は隠れた。

④その時にドアのそばに金のイヤリングの小箱を落とした。それに気づかず部屋をあとにして逃げた。

⑤そのあと2階の仕事場に戻ってきたミコライが入り口で小箱みつけた。

⑥ミコライはすぐにドゥシキンのところに行ってお金に変えて飲み歩いていた。

⑦犯人は老婆に質入したことのある人間である。

⑧犯人は犯罪経験のない素人だと理由も添えて言い切る。

・ラズミーヒンの推理はずばり当たっていた。ラスコーリニコフそのものだった。

 

 

・そして予審判事のポルフィーリィは質入した人間を尋問しているという。

(質草の一つ一つに老婆は預かった日付と名前を記入していたので質入した人が特定できた)

 

 

 

・そこへ妹の婚約者ルージンがやってきた。

 

 

 

・ラスコーリニコフはルージンに対して会いたくもなかった。話すこともない、何も聞きたくない。帰ってくれという態度。

 

・主人公の母親と妹も今ペテルブルクに向かっていてもうじきに到着するという。

 

・今、ルージンはレベジャートニコフの住まいに同居している。

 

 

 

・ラスコーリニコフはルージンに質問する。

「結婚の申込をした理由は、貧乏人の娘を嫁にもらうと恩を売ることができて言うことを聞くから」と言ったのは本当ですか?

 

 

・ルージンは、主人公の母の曲解だと否定する。

 

 

・ラスコーリニコフとルージンは修復できないような関係になる。

 

 

・ラスコーリニコフは全員に部屋から出て行ってくれとブチギレる。

 

 

 

・ルージンもラズミーヒンもゾシーモフもナスターシヤも部屋を出て主人公は1人になる。

 

 

・新しい服に着替えて、送金された35ルーブリの残り25ルーブリと5コペイカをポケットに入れて出かける。

 

 

 

・ラズミーヒンとゾシーモフは、常に黙っているラスコーリニコフが、老婆アリョーナの話を聞くと唯一興奮することに違和感を感じていた。

 

 

・《こんなことはすっかり、今日こそ、いますぐ、ひと思いに片づけてしまうんだ》どんなふうに、何によって片づけるか?それについて主人公はきまった考えを持っていなかった。

 

 

 

・ラスコーリニコフはセンナヤ広場の近くでアコーディオンの伴奏にあわせて歌っている少女に5コペイカ銅貨を渡した。

 

 

 

・ある死刑囚の話を思い出す。2本の足を置くのがやっとの場所で、永遠の闇に孤独だとしても死ぬよりは、その場所でも生きていたいと思うということを。

 

 

・レストランに入り、お茶を注文して、ここ5日間の新聞を持って来るように頼む。

 

 

・レストランには事務官ザミョートフも居た。

 

 

 

・ザミョートフがラスコーリニコフのテーブルに来た。

 

 

 

・「僕は老婆殺人事件の記事を読んでいたんだ、怪しいだろう」と伝える。

 

 

 

・「もし僕が犯人だったら?」

 

 

・ラスコーリニコフはお会計30コペイカを払い、チップを20コペイカ払う。

 

 

・そして、持ち金の25ルーブリをザミョートフに見せる。

「こんなにお金を持っている」

 

 

 

・「このお金はどこから手に入ったか分かりますか? 一文なしだった僕が、洋服も新しい」といって店を出る。

 

 

・ラスコーリニコフが表のドアをあけると、外から入って来るラズミーヒンとばったり会った。

 

 

 

・ラズミーヒンは心配して主人公をずっと探していたと怒り気味に言う。

 

 

・ラスコーリニコフは、「ぼくがきみの世話を望んでいないことが、きみには分からないのか?物好きがすぎはしないか?僕にはその親切が重荷なんだよ」とラズミーヒンに言う。

 

 

・ラズミーヒンは叫んだ「きみに言っておくことがある。きみたちは1人のこらず、—- ほら吹きだ!何かちょっと悩みがあると、まるで雌鳥が卵でも抱くみたいに、後生大事にそれを持ちまわる!そんなときでさえ他の作家たちの作品から思想を盗む。きみたちには自主独立の生活の匂いもありゃしない!きみたちの身体は蝋でできていて、血の代わりに乳のかすがよどんでいるのさ!まず考えることは—-人間らしさをなくすようにということなのだ!」

 

 

 

・そして今夜引っ越し祝いをするから来るように、家はポチンコフのアパート47号だと伝える。

 

 

・ラスコーリニコフは「行かない」といって背を向けて歩いて行った。

 

 

・ラズミーヒンは、彼が身投げするのではないかと心配になり追いかけるが、ラスコーリニコフはもう見えなくなっていた。

(やっぱり主人公を心配するラズミーヒン)

 

 

 

・ラスコーリニコフはすっかり弱りきっていて、N橋の手すりに寄りかかり遠くを眺めていた。

 

 

・隣に女性がきた。女は主人公をじっと見たがその目に彼は映っていない様子で、

 

 

・女性は不意に橋の上から川へ身投げをした。

 

 

・人々が集まり、女性は助けられた。

 

・主人公は警察署の方へ歩き出した。が、家を出たときの《ひと思いに片づける》あの意気込みはなかった。

 

 

・ふと気づくと、あの老婆の家の門のすぐ前に立っていた。彼は建物へ入った。

 

 

 

・2階のミコライとミトレイが居た部屋は、ドアも新しくなっていて、新しい入居者待ちだった。

 

 

・4階の老婆の部屋には職人が2人いて新しい壁紙をはっていた。家具はひとつも無く、内部も模様替えされていた。

 

 

・ラスコーリニコフは、あの時のように呼び鈴を二度、三度ひっぱってみた。あの時の記憶がよみがえってきた。

 

 

・ラスコーリニコフは職人に尋ねた。

「床はもう洗っちまったね。血のあとはもうない?老婆と妹がここで殺されたろう?一面血の海だったんだよ」

 

 

・「僕がだれか知りたいかい?一緒に警察署へ行こう。あちらで話してやるよ」と言って階段をおりていった。

 

 

・門のところにいた庭番にラスコーリニコフは「僕の名前はラスコーリニコフ、元学生でシールのアパートの14号室に住んでいます」と言い、「警察に行こう」と言ったが、頭がおかしいと思われて相手にされなかった。

 

 

・庭番はしつこいラスコーリニコフを突き飛ばした。

 

 

つづく….