なぜこの話は“牧歌調”なのか──季節のない街より

なぜこの話は「牧歌調」なのか

──『季節のない街』より

映画タイトルの
**【どですかでん】**は、
電車の音――「ガタンゴトン」と同じ意味だ。

六ちゃんが頭の中で走らせている、
想像の電車のオノマトペである。


■ 原作について

原作小説『季節のない街』は、
「ある街」を舞台に、住人たちの人生を描いた
全15編のオムニバス作品だ。

※厳密に言えば、六ちゃんは
その街の正式な住人ではない。

映画『どですかでん』は、
その15編の中からいくつかを抜き出し、
ひとつの物語として再構成している。


■ 「牧歌調」という話

小説の5番目に収録されているのが、
映画にも登場する
**『牧歌調』**という話だ。

内容は、
二組の夫婦が互いのパートナーを交換する物語。

──これだけ聞けば、

  • 重そう

  • どろどろしそう

  • 修羅場になりそう

そう思うのが普通だ。

だが、実際は真逆。

👉 驚くほど、あっさりしている。

だからこそ、
この話に「牧歌調」というタイトルが付いていることが、
静かに、しかし確実に効いてくる。

 


■ 田中邦衛という破壊力

ある夜。
益男が、初つぁんと良っちゃん夫婦の家に、
泥酔した状態で転がり込んでくる。

妻と口論になり、
家を飛び出してきたらしい。

この初つぁんを演じているのが、
田中邦衛さんだ。

ここははっきり言っておきたい。

👉 酔っぱらいの演技が異常にうまい。

「田中邦衛が
田中邦衛を
全力でやっている」

しかも酔っぱらい役なので、
超・田中邦衛である。

これは文章では無理だ。

観れば分かる。
本当に、観れば分かる。

※念のため言うと、
 僕は田中邦衛さんが大好きです。


■ 起きている事実があるが、普段の生活

この益男の来訪をきっかけに、
夫婦関係は
妙な方向へ転がり始める。

それなのに――

  • 修羅場にならない

  • 感情も爆発しない

  • 誰も壊れない

すべてが、
何事もなかったかのように収束していく。

この
異様な静けさ。

これこそが、
この話の「牧歌調」だ。


■ 繰り返し観てしまう理由

僕は映画を先に観て、
あとから小説を読んだ。

すると、
人物の心境がくっきり見える。

そのあとで映画を観返すと、
台詞や表情の意味が変わる。

👉 味が、もう一段深くなる。


映画全体として見ると、
この街の物語は
決して明るい終わり方ではない。

それでも、
なぜか繰り返し観てしまう。

派手な感動はない。

ただ、
観終わったあとに
あの街の空気だけが残る。

そんな映画だ。

なぜこの話は“牧歌調”なのか──季節のない街より” に対して1件のコメントがあります。

この投稿はコメントできません。