なぜこの話は“牧歌調”なのか──季節のない街より
映画のタイトルの「どですかでん」は、
電車の音「ガタンゴトン」と同じ意味だ。
六ちゃんが頭の中で走らせている、
想像の電車のオノマトペである。
原作小説『季節のない街』は、
「ある街」を舞台に、住人たちの人生を描いた15編からなるオムニバス作品だ。
(厳密に言うと、六ちゃんはその街の正式な住人ではない)
映画『どですかでん』は、
その15編の中からいくつかを抜き出し、一つの物語として再構成している。
小説の5番目に収録されているのが、
映画にも登場する『牧歌調』という話だ。
この物語は、
二組の夫婦が互いのパートナーを交換するという内容になっている。
話の材料だけを聞くと、
かなり脂っこく、どろどろした展開を想像してしまう。
だが実際の仕上がりは真逆で、
驚くほどあっさりとしている。
だからこそ、この話に「牧歌調」というタイトルが付けられていることが、
とても効いている。
ある夜、益男(あにき)が、
初つぁんと良っちゃん夫婦の家に、泥酔状態で転がり込んでくる。
妻と口論になり、家を飛び出してきたらしい。
嫁の愚痴を聞いてもらいたくて、
初つぁんに一方的に話し始める。
この初つぁんを演じているのが、田中邦衛さんだ。
とにかく酔っぱらいの演技が凄い。
「田中邦衛が田中邦衛を全力でやっている」
しかも酔っぱらい役なので、超・田中邦衛だ。
これは文章では伝えきれない。
観れば分かる。
本当に、観れば分かる。
(誤解のないように言うと、僕は田中邦衛さんが大好きだ)
この益男の来訪をきっかけに、
夫婦関係は、妙な方向へと転がり始める。
にもかかわらず、
物語は修羅場にもならず、破綻もしない。
感情が爆発することもなく、
すべてが何事もなかったかのように収束していく。
この異様な静けさこそが、この話の「牧歌調」だ。
僕は映画を先に観てから小説を読んだ。
小説では、それぞれの人物の心境がよりはっきり分かる。
その後、もう一度映画を観返すと、
台詞や表情の意味が違って見えてくる。
味が、もう一段深くなる。
映画全体として見ると、
この街の物語は、決して明るい終わり方ではない。
最初はハッピーエンドだと思っていたが、
実際はむしろ、その逆だった。
それでも、なぜか繰り返し観てしまう。
派手な感動があるわけでもないのに、
観終わったあと、
あの街の空気だけが、静かに残る映画だ。
この記事は、僕が以前書いた記事をchatGPTに修正してもらったものです。